2012年5月10日木曜日
オマージュ
先日おおかた出来上がった「海に背を向ける家」の
内部空間の最終チェックをしていたのだが、
ふと、設計段階の事を思い出した。
この住まいは設計を始める前に「神戸の山の手だからといって
無理して港が見える住宅にしなくてもいいですよ」とお施主様から
リクエストがあった。
そこで内部空間の立体的な構成を考え生活動線と共に
自然光の変化よる豊かな空間表情を演出することを主体に計画することにした。
最終的にはその表情を生かすため、「FARROW&BALL」社の
水性塗料を主な壁面すべてに使用することになったのだが、
この塗料、色合いが日本のペイントとは違い、微妙なニュアンスを持っている。
それは写真で表現することは難しく、実際の壁を見るのが一番いいのだが
誰でも見ることは叶わない。なのでごく一部の写真で我慢していただくしかない。
話は元に戻るが僕はポルトガルの老建築家「アルヴァロ・シザ・ヴィエイラ」の
光の扱い方がとても好きだ。
時には優しく、柔らかくそして強く崇高な時もある。
そんな光を自分が考える住まいに表現してみたいと願っていた。
ポルトガル、ポルト市にある「シザ先生」のアトリエ。
さすがに飛び込みでインターホンを押す勇気は無かった。
今にして思えば、押しときゃよかったかなあと少し後悔も。。
マルコ・デ・カナヴェーゼス「サンタ・マリア教会」のトップライト
「ポルト大学建築学部」天井スリット
勿論そんな大それたことが簡単に出来るわけではないが
あの穏やかな光を空間に遊ばせたいという願望だけは持続していた。
そこで光が遊んでくれそうな場所を思い浮かべながらスリットを作っていった。
リビング天井の水平スリットや階段廻りに光を落とす仕掛けを
作ったりして光が色々なところに回り込むように考えていた。
階段手摺りを壁に埋め込み光が作る陰影で
手摺りのラインを浮き上がらせてみたかったなどなど。。
彼への「オマージュ」というにはおこがましいが
何か知らぬ間に彼の影響を受けながらこの住まいは
完成に向かっていることは間違いない事実だ。
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