2012年3月6日火曜日

錨を下ろしたフロートハウス



土曜、日曜、月曜日とASJ紀伊田辺スタジオ主催の「未来をのぞく建築家展」に
参加のため、和歌山県新宮市へ出かけておりました。
また、昨年晩秋に初めてお会いして、プランニングを依頼された新宮市の若いご夫婦
「Mさん」にそのファーストプランをプレゼンすることも目的の一つでした。

出発前夜まで、新人スタッフの「M君」や「Hさん」が必死に作ってくれた模型を携え
朝一番の新宮行き特急「オーシャンアロー号」に乗り込んだ。

「Mさんご夫婦」とは時々メール交換していたのだが「空中にぽっかり浮かぶリビング」を
作りたいと僕が書いていたので、どんな建物なのかご夫婦でずっと考え想像していたそうだが
本当にどんなものか想像できなくて、頭が混乱していたそうだ。
「Mさん」紛らわしいこと言ってごめんなさい。

約束の時間、「Mさん」は果たしてどんな建物が出来ているのか
とてもドキドキしていたそうだ。
お二人ともとても緊張の面持ちでしたものね!
前日、お二人のお母様がお見えになり、僕の作品をご覧になられたのですが、
お二人のプランは一切お話しませんでした。
お母様もプランの事はまったくお聞きにもならなかったので、ちょっとほっとしました。
やっぱり、まずはお二人に見てもらいたかったので。。。

テーマは「錨を下ろしたフロートハウス」
コンセプトを話し出すととても長くなるので、今回は割愛しますが、
「フロートハウス」とは水に浮かび自由に移動できる水上コテージのようなもの。
写真は現代的なフロートハウス。カッコいいですよね!

出典 blogs.yahoo.co.jp

今回計画されているロケーションを考えると生活の中心になるリビングは
どうしても2階にしたいと思ってました。

周辺を建物に囲まれているため、唯一開いている北西、南西方向に建物の顔を作り
その部分を強調するデザインにし、黒い外壁にそこだけがホワイトのぽっかり浮かぶ
リビングダイニング。ゆっくりと浮遊しているような「フロートハウス」をイメージしていました。

そのリビングの窓からは新宮の街を見守る神倉神社と神倉の山々そして
天然記念物の「浮島」を切り取る。
日々そんな風景に囲まれて生活ができたら、とても清らかで大らかになるのではないか、
そして、「この土地に根付いて生活をしていく覚悟を決めて船の錨を下ろそう」そんな
家にしたいと考えていました。

お会いして、まず用意してきたコンセプトを読んでいただき、
その後、図面をご覧いただきました。一通りの説明を終え、
箱の中からこの「錨を下ろしたフロートハウス」の模型を出してお見せしました。

お二人はちょっと驚いたような顔をされましたが、すぐに嬉しそうな笑顔になり
少し興奮気味に模型を眺めていらっしゃいました。
とても気に入られた様子でしたので、この模型はお二人に預けていくことにしました。

プレゼンが終わり夕刻、新宮を発つ時間が来たので駅へ向かったのですが、
そこに「Mさんご夫婦」が見送りに来て下さってました。

とても嬉しかったなあ。なんだか互いの距離がぐっと近くなったような気になり、
柄にも無くちょっと目頭が熱くなっちゃった。。。。
プレゼンが終わった後、家に帰って嬉しくて嬉しくてずっと模型を眺めていたそうです。
僕も嬉しかった。。親子ほど歳も離れた僕にこんな若い方がプランを依頼され
それを気に入ってくださって。。。
名古屋の若い「Oさんご夫妻」の時と同じような暖かくて、とてもとても
アットホームな気持ちになって。。なんだか身内みたいな。。。

事務所スタッフのお土産にとこの「もうで餅」を用意して頂いて
大変恐縮していたのですが、聞くとこのお菓子は「熊野本宮大社、熊野那智大社
そして熊野速玉大社」でしか販売してないとのこと、わざわざ買いに行って頂いたそうで
とても恐縮です。

こし餡が入ったお餅を玄米粉(はったい粉)でまぶしてある、素朴で上品な味。
玄米粉なんて僕ら世代には懐かしい。。子供の頃、オヤツ代わりに砂糖を入れて
お湯で煉ったこの玄米粉をよく食べました。今どきそんなものは子供は
食べないでしょうけどね。。どこか懐かしい味でした。


その夜、家に帰ると「Mさん」からメールが届いてました。
そこには「このカッコいい家を絶対建てます」と決意表明がありました。。。

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