2011年7月17日日曜日

昼下がり


季節の中で真夏のムンムンする「けだるい昼下がり」が一番好きだ。

知らない町の、誰もがじっと息を潜め、
静かにこの暑さが遠のいて行くのを待っているような、
風鈴の音だけが響きわたる静まり返った路地裏。

岸壁や小船に眠気を誘う小さな波が繰り返し寄せ、
使われることなく干された魚網が広がる、ひなびた漁村の船着場。

日なたの草や土の匂い、アスファルトやコンクリートの焼ける匂い、
すべてのものを濃い色にしてしまう陽の光、
エアコンの騒音、赤い夾竹桃の花や百日紅が咲く庭先。

そんな風景を見ると何故かとても切なくて愛おしくて、
氷が溶けるようにその風景の中に浸み込んでいきたくなる。




スパッカ ナポリにて



瀬戸内 犬島の風景




あらゆる場所にいても、真夏の、その匂いというのか感覚らしきものが

心の奥のほうから、フツフツと湧き出してきて僕の全身を包み込んでしまう。

心は夢遊病者のように宙を彷徨い、膨張し続け、終いにあたり一面に拡散してしまう。

身は路上に臥し、この照り返す陽の下で大地に同化していく。


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