2010年10月8日金曜日

宝物


昨日は牛窓の「櫻山居」の施主、設計検査でした。
養生を取り払って、やっと全貌が確認出来ました。


この「櫻山居」にはいくつかの宝物があります。
今回はその一部をご紹介します。

まずは圧倒的な光の量です。もともと瀬戸内海は晴天の日が多いのですが、
この「櫻山居」の立地は建物を遮るものがほとんどありません。
日の出から日没まで一日中、陽が当たります。
ですから色々なところから光が侵入してきます。それはもう本当に刺激的です。
夏の日中はそれこそ、うだるような暑さではと思うのですが、ここは牛窓、
海も山もあり、日中は周囲の木立を抜けて気持ちのよい海風が吹いてきます。
都会の蒸し暑さなどぜ~んぜんありません。
2階の個室には南からの太陽が気持ちよく降り注ぎ、夕刻になるとアプローチには
美しいシルエットが出来ます。

土間の版築のスリットからも光が伸びてきます。階段の壁にもこんな光が。。。

夕刻、この建物では自然が作る感動的な素晴らしいショウが始まります。
夕陽が輝きだすと版築もオレンジ色に染まります。
その間にあるFIXを覗き込んでみると、階段のシルエットの向こうに
朱色の壁が垣間見えました。

あまりにも美しいので玄関土間に移動みると、コールテン鋼の扉の上にある
FIXガラスの間から一筋の光がシャープなラインを作っていました。

扉を閉めてみると今度は横の縦長FIXガラスから、夕陽が壁全体を何ともいえない美しい色に
染め上げています。思わず、施主のKさんご一家を大急ぎで呼びました。
朱色の光は壁だけでは物足りず、土間全体を薄紅に照らしていたのです。

元々この壁は鉄錆色の珪藻土で仕上てあるのですが、その色を上から塗りつぶすように
夕陽が茜色の壁を作っていきます。本当に自然は天才的な芸術家です。
この色どこかで見たことがある色と考えていたのですが、そうそうイタリアのテレニア海浮かぶ
ナポレオンが幽閉さた島、エルバ島のポルトアズッロでよく見かけた壁とまったく同じ色。

夕陽が見られる日は毎日こんな色に染まるのでしょうか?
空気の密度と光の強さ、沈む太陽の緯度が日々変化するので、
また違った光景が見えるのかも知れません。それにしても本当に羨ましい。
これが日々見られるのですから。ずっと見てても飽きないと思います。
建物の外観も時間により変化します。左から日中、夕刻、日没前。
最後は紫色から漆黒に変化していきます。
手焼きの焼杉は表面の炭化部分がいぶし色の光沢を持っているので、
染め上がる色に反応しやすいようです。
工事を担当している元浜組の小橋さんはこんな情景になることを以前から
気が付いていたようですが、どうも内緒にして今回みんなを驚かそうとしたようです。











0 件のコメント:

コメントを投稿