2010年9月19日日曜日

愛おしさ




人にはそれぞれ愛おしいものがある。

恋人、家族、ペット、それ以外にも大事なモノ、穏やかな時間や風景。
どこか見慣れた日常生活にこそ、何気ない愛おしさを感じるものかもしれない。

僕はと言えばもちろん愛する人。それから自分で考え、図面を引いた建物たち。
必死なって考え、もがき、苦しみ、時には媚を売ったりひれ伏したり、
でもなかなかこちらを振り向いてくれない。
たかが建築、されど建築。
ある意味、男と女の恋愛感情に似ているかも知れない。

付き合えば付き合うほどわからなくなったり、不安になったり、
自分はなんて愚かなんだと自己嫌悪になったり。。。

でもこれでいいんだと、どこかで自分自身を納得させている。そうでもしないと先へ進まない。
ちょっと進んでまた悩んでの繰り返し。

「櫻山居」バルコニーに取り付ける手摺りの最終形状を施主、スタッフ、工務店の担当者とで打合せ中。
煙突の下に版築の壁が見える。

西側の佇まい。2階煙突横がバスルーム。沈みいく夕陽が見渡せる。
玄関、エントランス廻りの仕上げがまだ残っています。

そんなもがき苦しんだこの「櫻山居」も、まもなく完成しようとしている。
建物が完成し、引渡しの前日、どの建物も独り占めさせてもらう時間を
施主、工務店にお願いしている。今までの時間をもう一度振返りたいのだ。
男はなかなか諦めがつかないから。。愛おしいのですよ。

身勝手だが設計そして工事中の間、その建物は自分のモノと思っている。
だから、ああしたい、こうしたいという欲望をなんとか実現しようと試みる。
施主や工務店の方々に無理なお願いをする。
それは愛おしいから。もっと美しく、いや完成度の高い建物になって欲しいから。
別嬪さんにして、お施主さんに渡してあげたい。それだけです。


建物北面の焼杉壁。スタッフのTさんが図面と現場納まりを照合中。

愛犬が暮らす南側の土間部分。焼杉と黒く塗られた軒裏が美しい。

版築と床石施工中の通り土間。版築のスリット部分には
防犯ガラスを組み込んだ複層ガラスが嵌め込まれている。
櫻山居の横手に広がるオリーブの畑。
昨日は「コツコツ、コツコツ」という木に穴を開けるような音が敷地の隣で響いていた。
キツツキの仲間の鳥だろうか。

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