好きな建築材料の中にコルテン(コールテン)鋼「耐候性鋼」というものがあります。
簡単に言えば錆びた鋼の事ですが、この鋼材、その表面に保護性錆(安定錆)を
形成するように若干の合金元素(銅など)を添加した化学成分を持つ低鉄合金鋼のことで
普通鋼に比べ4~8倍の耐候性があります。
表面の錆層の下部に極めて緻密な非晶質(アモルファス)層が形成され、
この層が錆の進行を抑制する働きがあります。
そのため一定期間が過ぎると、保護性錆がバリヤーを作り
空気中の酸素や水による錆の進行を防ぎます。
一般的には橋梁、鉄道レール等に使われるものですが、建築仕上げ材料として
世界中で使用されています。
素材そのものの美しさ(錆が美しいと認識してもらわなければいけませんが)、
その存在感は建物のイメージを決定付ける力を持っていると思います。
スペインやカリフォルニアなど乾燥した地域ではきれいな保護錆が
出来やすいと思うのですが、日本のように湿度が高く、雨が多い場所では
錆が流れやすく、あまり美しいとは言えないかも知れません。
大手鉄鋼メーカーの方と話してもやはり錆に対するクレームが時々あるそうです。
そんな中、「東野田プロジェクト」のコンセプトを考える中で(鋤、鍬)といった人と鉄の関係を
表現する方法として、このコルテン鋼を玄関ドアやその周辺に使うことにしました。
ただ、初期錆びの状態で鉄板を使用すると、多くの方が利用する玄関で
手や服が汚れてしまうため、表面を薬品処理して安定させた材料を使用します。
薬品処理したコルテン鋼の表情。
時間をかけて自然に錆を出すのがベストですが、今回は工期が決まっている以上
そこまで待てないのが現実です。
事務所でもコルテン鋼のサンプルを頂き、野ざらしにして実験していましたが、
なかなか思うように錆びてくれません。
そんな話をサンプルを見せながら「焼杉の家」の施主Kさんに話していたところ
自分の家の玄関ドアにどうしても使いたいということになりました。
かなり重いのでハンガー吊の引戸にしましたが、焼杉、版築、FIXガラス越しに見える
スイス在住のアーティストのリトグラフ、珪藻土の壁、玄昌石貼りの床がある玄関土間に
決して負けない存在感をだしてくれるのではないかと思っています。
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