西洋漆喰の起源は古代エジプト時代に遡るそうですが、
ギリシャ、ローマ時代を経て、べネツィア共和国繁栄期に
建築装飾仕上げとして、イタリア全土に浸透していったらしい。
世界最古の建築書(BC25年)と言われる「ウィトルウィウスの建築書」には
その時代に、既に確立していた西洋漆喰についての詳細な記述があるそうだ。
今世紀に入り、忘れられていたスタッコ技術の復活に力を注いだ
イタリアの建築家カルロ・スカルパらにより蘇った西洋漆喰は、現代性を含んだ
西洋の文化として今も受け継がれ続けられている。
下の写真はイタリアやフランスの世界的ブランドのショップ内装に使われている、
ポルベーレ・メディアという仕上げ。大理石の粉末、ペースト状の石灰などを
左官鏝で仕上る技法です。
この仕上げに使う石灰は石灰石を焼いてから水に漬け、
2年程熟成させたペースト状ものを使用します。
イタリアでは数百年前から行われてきた伝統的な方法で、
粉末に比べると品質が安定するそうです。
写真ではわかりにくいが、小さな砂の粒子が混ぜられていて、
それが表情を作り出します。
左は表情を押えた仕上げ、右は少し鏝跡を残した仕上げです。
下の写真はポルベーレ・メディア・グラッセロ仕上げと言います。
鏝で模様を出した後、艶を出すために金鏝で何度も磨いて仕上ます。
スタジオクランツォでは15年ほど前から、この仕上げを住宅や店舗
集合住宅のロビーなどに数多く使用してきました。
昨年オープンしたフレンチレストラン「ラ メゾン ブランシュ」の客席も
この西洋漆喰を使っています。白壁ですがライトが当たると地模様が浮かびます。
鏝で何回も磨くことにより、地模様が浮き上がってきます。
地模様は設計者のイメージと職人の感覚により、
阿吽の呼吸で生まれてきます。
ですから、同じ職人さんを指名してお願いすることが多いです。
もちろん左官職人さんであれば、誰でも出来るという仕事ではありません。
下の写真は下地に同じ模様を描いてもらいながら、仕上の手法を変えてもらいました。
同じ壁面ですが、磨き方を変えると濃淡、艶が変化します。
写真中央部分で表情が違うのがおわかりになりますか?
少し離れてみると下の写真のように艶あり、艶無しのボーダーが出来上がります。
壁面に変化をつけるために施工した例です。
因みにあまり光っていないところは、コンビニのビニール袋で磨いてあります。
現在設計中のリノベーション住宅の玄関、リビングダイニングの壁面を
ポルベーレメディアで仕上る予定です。
この建物はRCですので、下地となる壁面が安定していますから
クラック(ひび割れ)が入りにくいこともあり、この技法で仕上ることにしました。
木造など壁面が微妙に動きやすいものは割れの原因になり易いので
使うことはほとんどありません。
石灰は元々多孔質ですので湿度調整機能があり、また自然素材ですから
環境にも、生活にも負担をかけません。
この住宅は余分なものをそぎ落とした、ミニマルな空間をデザインしようとしていますので
あまり冷たい空間にならないよう、少しだけ温かみのある表情を出そうと
現在職人さんに「テクスチャーサンプル」を制作してもらっています。
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