共通の知人を通して彼のワーゲン(ビートル)を買ったことに始まる。
当時はあまりお金がなくて新車を買えるだけの余裕はなかった。
でも普通の車に乗るのが嫌で、何かいい車はないか探してた頃だった。
そんな中、マヤオさんが車を売りたいという話が知人から舞い込み、
その場でどんな車か確認もせず「僕が買う!」と宣言した。
マヤオさんを感覚的に間違いのない人だと信じたのだと思う。
車は大阪まで、彼の家族全員で持ってきてくれたおかげで、
彼が陶芸家であることは知っていたものの、どんな処に住んでるのか、
どんな作品を作っているのかもまったく知らずにいた。
そのワーゲンを運転して、美山へ遊びに来て欲しいと言われつつ
仕事が忙しく、なかなか彼の家には行けなかった。
ある日車を掃除してたら、座席の間に「染色されたダチョウの羽」が落ちていた。
同じ趣味を持つ人しかわからない「フライフィッシング」の毛ばりの材料だった。
彼もやっているんだと知ると、すぐにでも会いたくなってしまい
釣り道具を車に積み、福井と京都の県境の山里「美山」へ向かった。
長い道のりの果てにたどり着いたマヤオさんの家を見たとき
僕は心と身体がどんどんピュアになっていくのを感じた。
そして初めて見る彼の作品。
さらりとしたフォルム、シンプルではあるが深みのある色彩。
彼の人柄のような、力みのない飄々とした作品たち。
アーティストとしての彼の力量をまのあたりにして、
その洗練された仕事は僕を魅了した。
建築設計を生業してることもあって
茅葺屋根の古民家の佇まいにもいたく興味をそそられた。
それから幾度となく美山へ通った。
そして彼を通して知った芸術家たちとの出会い。
夜、蛙の鳴き声しか聞こえない座敷で聞いた
マリアカラスやスラヴァのソプラノヴォイス。
古民家に沁み込んでいく歌声は僕の心を震わせました。
田園風景にパパロッティの歌が、最高にマッチするなんて考えもしなかった。
彼のお陰で芸術的感覚を、知らず知らずのうちに磨かせていただきました。
その後、マヤオさん家の印象は自己昇華され、INAXのデザインコンペや
住いのリフォームコンクールで賞をいただいた「北摂の民家」へと発展していく。

マヤオさん家の全景(昔は村長さんの家だったらしい) アプローチ付近
苔むした屋根と居間 囲炉裏端(電話中のマヤオさん)
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