2009年6月12日金曜日

マヤオさん家

僕がマヤオさんと知り合ったのは22年ほど前、
共通の知人を通して彼のワーゲン(ビートル)を買ったことに始まる。
当時はあまりお金がなくて新車を買えるだけの余裕はなかった。
でも普通の車に乗るのが嫌で、何かいい車はないか探してた頃だった。
そんな中、マヤオさんが車を売りたいという話が知人から舞い込み、
その場でどんな車か確認もせず「僕が買う!」と宣言した。
マヤオさんを感覚的に間違いのない人だと信じたのだと思う。
車は大阪まで、彼の家族全員で持ってきてくれたおかげで、
彼が陶芸家であることは知っていたものの、どんな処に住んでるのか、
どんな作品を作っているのかもまったく知らずにいた。
そのワーゲンを運転して、美山へ遊びに来て欲しいと言われつつ
仕事が忙しく、なかなか彼の家には行けなかった。

ある日車を掃除してたら、座席の間に「染色されたダチョウの羽」が落ちていた。
同じ趣味を持つ人しかわからない「フライフィッシング」の毛ばりの材料だった。
彼もやっているんだと知ると、すぐにでも会いたくなってしまい
釣り道具を車に積み、福井と京都の県境の山里「美山」へ向かった。
長い道のりの果てにたどり着いたマヤオさんの家を見たとき
僕は心と身体がどんどんピュアになっていくのを感じた。
そして初めて見る彼の作品。
さらりとしたフォルム、シンプルではあるが深みのある色彩。
彼の人柄のような、力みのない飄々とした作品たち。
アーティストとしての彼の力量をまのあたりにして、
その洗練された仕事は僕を魅了した。
建築設計を生業してることもあって
茅葺屋根の古民家の佇まいにもいたく興味をそそられた。

それから幾度となく美山へ通った。
そして彼を通して知った芸術家たちとの出会い。
夜、蛙の鳴き声しか聞こえない座敷で聞いた
マリアカラスやスラヴァのソプラノヴォイス。
古民家に沁み込んでいく歌声は僕の心を震わせました。
田園風景にパパロッティの歌が、最高にマッチするなんて考えもしなかった。
彼のお陰で芸術的感覚を、知らず知らずのうちに磨かせていただきました。

その後、マヤオさん家の印象は自己昇華され、INAXのデザインコンペや
住いのリフォームコンクールで賞をいただいた「北摂の民家」へと発展していく。


       
マヤオさん家の全景(昔は村長さんの家だったらしい)    アプローチ付近


    
 苔むした屋根と居間              囲炉裏端(電話中のマヤオさん)
                                                                 
      芝生を美山の田園に見立てたスタジオクランツォでの個展と彼の作品

0 件のコメント:

コメントを投稿