御影石の1枚板のテーブルがあります。
「インパラブラック」と呼ばれる南アフリカ産の黒御影です。
結構大きいので通常の接客、打合せ以外にもインターンシップの
学生達の共同机になったり事務所の食事会や
大型模型の作業台など、とても重宝しています。
このテーブル、2年ほど前「Hさん」という街のパン屋さんから譲り受けました。
彼とは僕がまだ会社勤めをしていた頃に知り合ったクライアントで、
初めてお会いしたのは1988年でした。経営しているパン屋に隣接して
当時でいうカフェバーを作りたいという依頼があったのです。
二人とも歳が近かったこともあり、意気投合し新しいお店のイメージは
どんどん膨らんでニューヨークのダウンタウンにあるような、
スタイリッシュシュなお店にしようとデザインを進めていきました。
お店の名前は「AZ33」、私が名づけました。
そのとき二人で絶対使おうと決めたのが黒のスチール椅子と
数種類デザインしたインパラブラックのテーブルでした。
その後、私が独立してからも時折お店を訪れては
近況を報告したりしていましたが、数年前
お店の敷地に集合住宅を計画することになり、
店じまいをすることになったと連絡をいただきました。
新しい建物も色々相談に乗って欲しいと言われましたが
デザインした建物が消えていくのは設計者としてとてもつらいものです。
何とか新ビルに組み込めないか思案しましたがどうにもなりません。
解体が始まったある日、Hさんから連絡をいただきました。
大事に使ってきたテーブルを処分するのが忍びなく
何とかできないか考えてたが,せめて一番大きくて気に入っていた
インパラブラックのテーブルだけでも僕に引き取ってくれないか
というものでした。丁度事務所でもそれまで使っていたテーブルが小さく、
打合せに不便を感じていましたので、とにかく見に行きますと
スタッフを連れて現場へ出掛けました。
寸法を測ってみると、天板自身が「20年後の自分の行き先」を
知ってたかのように、事務所のスペースにピッタリのサイズ。
解体で傷まないように直ぐにトラックを手配し事務所に運び込んだのです。
テーブルは白い大理石の床や打ち放しのコンクリート壁と
まったく違和感なく調和し事務所の主みたいな存在感を醸し出しています。
その後テーブルの具合を見に来られたH夫妻も
あまりにもみごとに納まっている姿にいつかこの場所に
戻って来るべきものだったんだなと、とても喜んでいらっしゃいました。
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