2011年3月13日日曜日

アコルドゥ(Akordu)






随分とご無沙汰していた奈良 富雄にある
モードスパニッシュレストラン「アコルドゥ」へやっと伺うことが出来た。

昨年冬、オーナーシェフの川島さんから、「アコルドゥ」を舞台にした
BS日テレの「皿の上の物語」のDVDを送っていただき、早く予約をしなければと思いつつ
個人的な落ち込む事情等も重なりなかなか行けないでいた。
美味しいお店ですよとお奨めした「Mご夫妻」が、躊躇している間に行かれたようで絶賛していただいた。
3月下旬にもう一度食べに行きますと、Mさんからご連絡をいただき、紹介した本人が行かないようでは
具合いが悪いぞ!とあわてて予約の電話をしたわけです。

川島シェフの料理プロセスは私達建築家のデザインに対する考え方と類似点が多い。
どういうことかと言えば、彼は食材を前にしてまず、料理の名前を考える。
その名前は感覚的でかつ繊細な「詩」のような言葉の描写だ。
それぞれのフレーズは全体をしっかり構成していく。
建築家が土地を見、諸条件を検討した上でその建物のコンセプトを考える。
その考えを元にダイアグラムを検討し具体的なカタチを作っていく。

食材を見て今日はこの料理にしようと決め、それに見合った名前を考えるのではない。
建築で言う「後付けコンセプト」ではないのだ。
だから今日はすべての料理の写真と、料理名もすべて掲載しますので
料理と名前を比較してイメージしてみてください。

その前に飾り皿の上に落ちた満月。とても詩的でしょう?
単にテーブルの上の照明が映りこんでいるだけなのですが、なんとなくシェフの仕掛けに見えます。

アミューズの前に牧草やハーブを乾燥させ温かいお茶にしたものが出た。
寒い日にお越しいただき、少し体を温めてもらうためにお出ししているそうだ

では最初の料理からご紹介します。
料理名は「深い森のモヒート 柑橘とハーブのアペリテポ」
(大きいグラスにはスモークした干草が入っており、クロケットに仄かな香りを残す。
小さいグラスは柑橘とスミレのカプチーノ)

-スペインとイタリアのオイル 発酵オイルバター ヒマラヤの塩-

「土にまみれた野菜 「冬」 アブラナ科といくつかの葉」
(土に見立てたものはオリーブを砕いてドライにしたものを使っている)

「苺とアヴォカド、海老のサラダ レタスクリーム」

「フォアグラのテリーヌ 赤いリボンと酢漬けのサラダ」
(ビーツを赤いリボンに、ズッキーニを緑のリボンに
その下はホウレン草のジュレ、紫キャベツの酢漬け)

「オリーブオイルの砂 日本のネギと椎茸、ジロル茸、 卵黄とスミレ」
(細長く敷かれているものが森の小道をイメージしたオリーブオイルを
特殊処理した砂、黄色い卵黄の中にスミレのオイル)

「ニホンテキナオワン たら白子と軽いサルサヴェルデ」
(日本料理の椀物をイメージしたもの。抹茶椀に似た器が用意されている)

完全なオープンキッチンなのでシェフの料理姿がよく見える。

「まながつおのアサード 大豆の甘い印象添え」
(日本の家庭で日常的使われる調味料が入ってるが、その微妙な味加減を
上手く処理している。何の調味料かは想像してみてください)

「牛頬肉の30時間火入れと炭火焼野菜の涙 “ひとり静か”」
月桂樹と世界の胡椒ミックス(マダカスカル、テリチェリ、サラワク
キュべべ、タスマニア、ジャマイカ、マラバー、グリーン、ピンク、山椒)

「スペイン 羊たちのチーズ」

「冷たいカカオスープに浮かんだエスプレッソのかす、
軽いコーヒーのクリームと今どきのカゼイン」
(カゼインとはたんぱく質の膜のような物でババロアの食感)

春の兆し 甘い岩肌 レモンクリームと柑橘のジェラート
(甘い岩肌はメレンゲに炭を混ぜたもの)

ざっとこんな感じです。でも一品出される度、素晴らしい表現力と驚きがあります。
そんな名前の付け方が、ワザとらしいといわれる方もあるようですが、
僕はすごい刺激になります。そして何より美しくて美味しい!し料理に余韻がある。
感動モンですよ!お店の名前の通りずっと「記憶」に残る料理です。
シェフとも久しぶりに話をしましたが、控えめで静かな印象で
あのひらめきはどこから生まれるのだろといつも思います。
フランスの三ツ星シェフ、ミッシェルブラスにどこか似てるのでしょうか?

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