2010年10月5日火曜日

小さな出来事



帰宅時刻の混みあう御堂筋線での出来事。

目の不自由な初老の男性が千里中央行きの電車に乗ろうとしていた。
車内はとても混んでいて、乗車口に立てるのがやっとの状態。

丁度僕が乗っていた乗車口に来られたので、プラットホームへ降り、乗車スペースを作った。
一人のサラリーマンがすかさず電車にその男性を導き入れた
その後、近くにいた別の方が手摺りを捕まらせ座席の方へ案内すると、座っていた男性が
すっと立ち上がり、その初老の男性を席に座らせた。「有難うございます。有難うございます。」
何度もお礼を言われる初老の男性。

この間数十秒。なんだか阿吽の呼吸で流れるように事が進んだ。

近くでそれを見ていた若い女性が、温かく微笑んでいた。
僕もつられて目元が緩んだ。その場にいた人たちの心がとても嬉しかった。

車内になんだかとても温かい空気が流れたようだった。

数日後、梅田の改札口を入ったところで先日の初老の男性に会った。
丁度プラットホームへの階段を下りようとされるところだった。

僕は手を差し伸べ階段を一緒に下りた。
どの辺りで待つのがいいですか?と尋ねると
まっすぐ行ったところにある階段の壁辺りがいいですと言われ
そこまでお連れした。

また「有難うございます。有難うございます。」と何度も言われた。
それから「私は千里中央まで行きますが、あなたはどこまでですか?」と尋ねられ
「新大阪までです。」と答えると、「また会ったら是非声を掛けて下さいと」言われた。

毎日の通勤の行き帰り、混雑する梅田駅周辺を通るが、多くの身障者の方とすれ違う。

そしていつも思う。街はこの方達に本当に優しいのだろうかと。
階段や段差、どこにあるかわからないエレベーター、点字ブロック近くの障害物等々。
自分が目を閉じて安心して歩ける距離はほんの数メートルもないだろう。

人は気が付けば優しく出来るかも知れないが、街や構造、設備、などが優しくなければ意味がない。

設計という仕事をしている以上、些細なことでも良いから何か役に立つことを考えなければ。。。

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