2018年2月20日火曜日

見えない力



アトリエの名称
STUDIO CURANZIOのロゴの上には小さく
architecture++CGdesign と記載されています。

これは設計・建築デザインに加え、CGデザインが私どもの
重要な仕事ですと公にしているのですが、
納得のいくCGを作ることはなかなか大変な作業なのです。


イタリア家具ブランドMolteni&Cを中心にした
ペントハウスのインテリアデザインCG(2017年12月竣工)




















イメージが固まった時点で、私の頭の中にある完成予想の映像を
脳から直接パソコンに接続し、画像をクライアントにご覧頂けたら
もっとスムーズに打合せが進むだろうし、互いの感覚的な整合性について
確認作業が出来るハズと考えていました。


Molteni&Cの家具・システム収納家具と無垢の板材で壁面を
構成したインテリアデザインCG(2017年12月竣工)




































ただ、その頭の中を理解してくれる表現者が中々現れなかったのです。
それも相当なリアリティで表現してくれるクリエーターが。

3年程前、アトリエに1通のスペイン語のメールが届きました。
たまたまアトリエスタッフに多少スペイン語を理解する女性がいたので
内容を確認してもらうと、CGの売り込みでした。
それも日本の大阪に在住するイタリア人。
売り込みだから大したことは無いだろうと思っていたのですが、
彼のポートフォリオを覗いてみると、世界的に有名な建築家と協働した作品が
ずらりと並んでいて大変驚きました。

僕の小さなアトリエでは彼と仕事を一緒にやるのは金銭的にも無理だなと
思っていたのですが、でもとても彼に興味があったので、
一度アトリエに遊びに来ないかと連絡したのが、クリエーター「マッシモ」との
付き合いの始まりです。
それにトスカーナ州の出身で、食べることが大好きという、
私には願ったり叶ったりの人でした。
デザインのセンスも方向性が近いこともあり、互いに言葉で理解をすること以上に
感覚でわかりあえる「目に見えない力」を持った頼もしいパートナーでした。

幸いにも彼が初めてアトリエに来た日、
たまたまクライアントから新しいプロジェクトの依頼があり、
これも何かの縁だと思い、彼にそのプロジェクトのCGを任せてみようと決断しました。

そして出来上がったCGを見た時、誰もが驚きました。
一様に「写真」と思うほどリアルなCGでした。
私以上にクライアントがとても喜んでくれたのです。


イタリア家具ブランド「minotti」のソファと
イタリアキッチン「Euromobil」を使ったインテリアCG
シャワーカランやソファのリアルな表現
バスルームやパウダールームの美しい佇まい。
(現在工事中のプロジェクト)

 

 























現在、彼には多くのCGを制作して貰ってます。
私のプロジェクトCGはすべて彼が作っています。スタッフが作るCGもありますが、
クライアントに決断をお願いする時は絶対的な力が必要なのです。
私の頭の中を覗いて頂くツールが。。。

2018年2月14日水曜日

千年チェア


 
 
マイナーチェンジしたHPの表紙に使っている写真。

「嵯峨野別墅(べっしょ)」のインテリア写真ですが、
ギャラリーの繊細な縦格子越しに見える黒い背もたれのソファ、
それが「千年チェア」。徳永家具工房の徳永順男さんの代表作です。

7~8年前だったか、徳永さんが京都で個展を開催された時に初めて見て、
その存在感と迫力に圧倒され、いつかどこかで使ってみたいと思ったソファです。

「嵯峨野別墅」の施主は当初この椅子も含め、「欅」を使う家具に難色を示していました。
あまり良い欅を見たことが無かったので、とても印象が悪いという理由だったのですが、
思い切って徳永さんの吉川の工房を一度見に行かないかと誘ってみました。
彼の工房は欅を使った家具が多いので、見てもらってダメだったら、
木の家具を「嵯峨野別墅」に使うことはあきらめようと思っていました。

本当は彼の家具をあちらこちらにレイアウトすることで、
インテリアを完成させるように建築の内装をデザインしてあったのですが。

クライアントは工房に一歩足を踏み入れた瞬間、欅の大ファンになってしまいました。
その場でダイニングテーブルや椅子などをオーダーされ、
まずはその出来栄えを確認してみることにしたのです。

数か月後完成し、運び込まれた家具を見て、クライアントご夫妻は大変感激され
この木の持つ温もりに惚れこまれました。

そして、とうとうリビングに置くソファ「千年チェ」をオーダーしてくださったのです。
そのソファも昨年暮れに納めましたが、それでもまだ色々と欲しいということで、
現在はソファに合わせる座面の低い椅子たちに加え、
新たに徳永さんと私でデザインを考えた数竿のチェスト類などを制作中です。

この嵯峨野別墅は春の桜、秋の紅葉を楽しむための住まいですが、
その季節になるとご友人たちをお迎えするゲストハウスのような役割を担います。

これから先、この空間を楽しんで頂く事で、京都嵯峨野の素晴らしさを
新たに発見頂けたらと心から願っております。


「十和田石を敷き込んだギャラリー越しに見る千年チェア。
細い桟だけで構成した障子。摺り上げ障子になっています。
障子戸の和紙は沖縄の月桃を漉いた「月桃紙」
素朴な風合いで麻すさを練り込んだ京壁によく合います。」



















独特の存在感に満ちた「千年チェア」
アーム部分は欅、背もたれは檜を芯に黒革を巻いてます。
座面は鉄染した栗の一枚板。
ティーテーブルも欅ですが、「カンナフィニッシュ」仕上げにしてあり
周辺がうっすらと曲面して盛り上がり、置いたモノが転げ落ちないようになってます。